お知らせ

イベント情報 , 団体の動き , 新着情報 , 施策関連情報 ,
2016.11.2

さまざまな緊急事態に役立つ 消防バイクの頼もしい力

京都市消防局のバイク隊

●緊急事態における消防バイクの有用性が注目されています。

●災害現場に駆けつけ、情報収集を行うのが第一の任務です。

●消防バイクの機動力は、一刻を争う災害現場で役立っています。

※この記事は2013年3月現在の内容です。

消防バイクの活用状況を調査——総務省消防庁

2012年、総務省消防庁では、全国の消防本部を対象に「消防活動用バイクの活用状況等の調査」を行い、6月に調査結果を公表しました。これによると、赤色灯とサイレンを備えて緊急走行のできる消防バイクを保有している消防本部は、東京消防庁、京都市消防局、浜松市消防局、熊本市消防局など58本部で、車両数は合計183台でした。

注目される消防バイク(京都市消防局提供)

注目される消防バイク(京都市消防局提供)

また、運用方針や活動要領を定めている消防本部が29あり、総じてバイクの利点を活かして早期に現場到着できる場合に出動し、災害への初期対応、情報収集、本隊支援を行うというのが基本になっているようです。
大地震など大規模災害への危機管理は、国や地域の重要課題です。消防庁の調査でも、大規模災害時に消防バイクをどのように使うか尋ねており、これに対する回答は、「情報収集」36、「広報・避難誘導」6、「消火活動」3、「捜索」「警戒」「救助」「他都市からの応援隊の先導」各1、「状況により判断」19といった結果となっていました。

バイクを活用するメリットは明らか

では、これまで消防バイクを運用してきている各消防本部では、そのメリットをどう捉えているのでしょうか。消防庁の調査結果では、「大型車両や救急車等が進入できない狭い道路や場所(山岳)に進入できるため、迅速に各種活動が可能であること、また、車両渋滞時に先行して現場到着して活動ができる」と利点をまとめ、ほとんどの本部が、バイクのもつ機動性、迅速性による活動効率のよさを評価していることがわかりました。
消防バイクを活用した奏功事例としては、災害現場での情報収集に役立ったほか、山岳・山林での行方不明者の捜索、山林火災の消火などが挙がっており、事態解決につながる活躍もみせています。
消防庁では、「消防バイクの運用は、安全確保などの面から留意すべき点もありますが、今回の調査結果からは、災害状況に応じて効果的に運用されています。今後、バイクの導入や活用を検討する際の参考にしてほしい」としています。

首都高速の事故などに出動——東京消防庁

消防バイクが実際どのように活用されているか、いくつかケースをみてみましょう。
わが国の首都を守る東京消防庁には、通称「クイックアタッカー」と呼ばれる消防バイク隊が都内10署に配置され、各署で2台ずつ運用されています。

クイックアタッカーの隊員

クイックアタッカーの隊員

クイックアタッカーが初めて配備されたのは1997年12月のことで、阪神・淡路大震災を教訓に導入されました。2台1組で出動し、火災や事故の現状把握を行い、後続隊に情報を伝えることを主な任務としています。
向島消防署のYさんとKさんは、2人ともクイックアタッカーに憧れて志願しました。例えば同消防署に近い首都高6号線上で交通事故が発生すると、クイックアタッカーの出番になります。平均して月に1~2回はバイクでの出動事案が発生しているといいます。
Yさんは、「高速道路で事故が発生すると、交通渋滞が起きますが、バイクは渋滞の隙間を抜けていち早く現場に着くことができます。首都高では、これまで車両火災の消火を行ったり、急病で運転できなくなった高齢ドライバーを救助したことなどがあります。」と話します。負傷者のなかには一刻を争うケースもあり、クイックアタッカーによる現場対応は、人命救助に大きく役立ちます。
またKさんは、「現場に一番乗りするわけですから、事故や火災の場所を後続隊に正確に伝えたり、逃げ遅れを確認して必要ならば増車を要請したり、消防のプロとしての判断が問われます。責任は重いわけですが、やり甲斐を感じています」と話し、任務に対して誇りを抱いている様子だ。

災害現場の状況を克明に伝える——京都市消防局

京都市消防局では、2012年6月に初めて3台の消防バイク(通称:KYOTO REDWING)を導入し、7月9日から運用しています。この消防バイクは、情報収集能力の強化を図ることが主な目的であるため、消防バイクが出動する際は、映像伝送システムを携行しています。隊員がスマートフォンで災害現場を動画撮影し、本部にライブ映像を送ることができます。本部では、バイクから送られてきた映像をスクリーンに映し出し、被害状況に応じて適切な対策を講じるという仕組みです。

京都市消防局のバイク隊

京都市消防局のバイク隊

バイク隊が発足して1カ月目、京都市は集中豪雨に見舞われ、市内には浸水で孤立する地域が出ました。これによりバイク隊が初出動となり、被災地域を巡回し、現場の様子を本部に中継しました。
同消防局では、「ヘリコプターなど上空からの映像に加え、バイクで行けば人の目線で被害の状況を把握できるため、災害対策に有効な判断材料を集めることが可能です。現場に到着する時間も早く、バイク隊の役割は大きかったと思います」と話しています。

遭難者の捜索に威力発揮——上田市消防団

日本の消防組織には、民間人が運営する地域の消防団があります。多くの消防団の場合、消防ポンプ車なども独自に保有しており、なかには緊急指定を受けた消防バイクを運用している団もあります。

消防バイクをいち早く導入した上田市消防団

消防バイクをいち早く導入した上田市消防団

長野県の上田市消防団は、早い時期から消防バイクを導入した“さきがけ”の組織です。バイク隊が発足したきっかけは、1994年に市内で発生したオイルターミナルの火災で、狭い道路が大渋滞したなか、当時の消防団員が「バイクなら動ける」と、個人所有のバイク約20台で現場に駆けつけ、延焼を食い止める活動を行ったことでした。バイク隊の正式な旗揚げは1996年1月で、消防団員のうち、バイクの運転に心得のある150人が隊員として組織されました。当時はすべて隊員所有のバイクで活動するというバイク隊でしたが、現在同消防団では、緊急車両の消防バイク6台と、調査用車両として通常のバイク4台を保有しています。バイク隊員には229人が登録されているそうです。
上田市では、バイク隊が出動する緊急事態は月に1~2回起きるといいます。山菜シーズンなどに山で行方がわからなくなった人や、認知症の高齢者、迷子などの捜索活動に出動するケースが多いといいます。「地域が広いのと、徒歩でしか通れないような険しい道を捜索しますから、バイクの力が発揮されます」とのことです。

極限の事態でもバイクは大いに役立つ——気仙沼市消防団

2011年3月11日、大地震と大津波、さらに市街地が炎上するという未曾有の大災害に襲われた宮城県気仙沼市。同市消防団(団員数830人)にもバイク隊があり、緊急車両である消防バイクが3台と、通常活動に使うバイクが3台配備されています。大規模災害時にバイク隊はどのような活動を行ったのか、同バイク隊の隊長に振り返ってもらいました。

走行訓練を行う気仙沼市消防団バイク隊

走行訓練を行う気仙沼市消防団バイク隊

バイク隊長はこの日、大津波警報が発令されたため、職場から消防バイクの保管場所に向かい、“避難広報”といって、市民に危険を呼びかけて避難を促す活動に1人で取りかかっていました。
その夜、隊長は大規模火災が発生した地区で消火活動に加わり、翌日は、バイク隊の指揮をとりました。10人いるバイク隊員は全員無事だったので、活動できる隊員は、住民の消息が途絶えた地区に赴いて、被害状況と安否確認をすることになりました。がれきでクルマが通行不能となった道を走り、人一人通るのがやっとの狭い山道をかき分け、海沿いの集落を見て回りました。ある地区では全滅を免れた3軒の家が残っており、1軒に30人以上の人たちが身を寄せ合っていたそうです。赤いバイクが来たのを見て、「よかった!助けに来てくれた!」とみなうれし泣きしたといいます。
発災から3日目ごろからは、停電の影響で消防無線も使えなくなり、消防団本部と各分団を往復して情報連絡を取ることがバイク隊の役目になりました。必要物資の情報収集などを行うなかで、孤立した地区に1日も薬を欠かせないという子供がいることがわかり、必要な医薬品を届けることができました。これもバイクがあったからこそできたことでした。
バイク隊長は、「まさかの災害時に、バイクは本当に役に立ちます。ほかの自治体でもぜひ消防バイクを導入しておくべきです」と、訴えています。

JAMA「Motorcycle Information」2013年3月号特集より
本内容をPDFでもご確認いただけます。
活躍する消防バイク