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2019.4.10

消防団へ“赤バイ”導入を促す! 全国で二輪車研修を実施中

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●迅速な災害対応を可能にする消防の“赤バイ”が注目されている。

●総務省消防庁は47都道府県の消防学校にオフロードバイクを2台ずつ配備。

●消防団を対象にした二輪車研修を行うことで、赤バイの普及促進を図る。

日本列島は毎年のように地震や豪雨による甚大な災害に見舞われている。南海トラフ巨大地震の発生も懸念されており、社会が一丸となって万全の防災態勢をとっていく必要がある。
災害時における“二輪車”についてみると、交通がマヒした被災現場でも機動的な移動手段として使われる。とりわけ消防活動二輪車(通称:赤バイ)は、発災直後の情報収集等に活用されるなど、自治体の迅速な災害対策を支援するツールとして認知されつつある注1。
そうした状況を踏まえ、総務省消防庁(以下「消防庁」という)は、地域の防災力を強化する施策の一つとして、現在、全国の消防団に赤バイの導入を促す事業を行っている。赤バイの有用性が理解され、今後の普及に弾みがつくか、大いに注目したい取り組みだ。

※注1:一般社団法人日本自動車工業会(自工会)は、主に行政機関における大規模災害時を想定したバイク活用事例を集めた『安心安全な社会づくりに二輪車を活用する』(カラー冊子・2016年)を発行しており、自工会のホームページからPDFデータをダウンロードすることができる。
http://www.jama.or.jp/motorcycle/environment/pdf/disaster_measures.pdf

全国の消防学校に赤バイを配備

消防庁が行っているこの取り組みは、2017年度から2019年度までの3カ年で、47都道府県の消防学校にオフロードバイク(排気量250cc)を2台ずつ配備し、消防団員を対象とした二輪車実技の教育訓練(以下「二輪車研修」という)を実施していこうというもの。2017~18年度で32校へ配備が済み、19年度には残りの15校に納入される予定となっている。
重要なのは、オフロードバイクが配備された消防学校では、該当地域の消防団に参加を呼びかけて、二輪車研修を継続的に行っていくということ。初年度の研修は国の予算で実施されるが、次年度以降は各消防学校が主体となって実施する仕組みとなっており、定着化が期待されている。
消防庁 地域防災室 消防団係長は、「近年の消防団は、火災のみならず自然災害への対応など地域防災力の中核として能力向上が求められています。東日本大震災や熊本地震で赤バイが有効に活動した事例もあり、災害時に二輪車は役立つと判断し、事業を推進しています」と説明する。

●オフロードバイクの無償貸付事業(各年度の納入先/総務省消防庁)
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赤バイの活動事例を集めたPR動画を制作

2018年4月1日現在、全国には消防団が2,209団ある。消防庁によると、その活動用に二輪車を保有している消防団は55市町村で合計233台(2017年4月現在)と、まだまだ少ないのが実情だ。
そこで消防庁は、各地の消防団が赤バイの導入を積極的に検討できるよう、赤バイを運用している消防団の活動を紹介したPR動画(約26分)を制作注2、二輪車研修の座学教材(DVD)として消防学校に配布している。災害現場で赤バイがどのように活動し、平時にはどう運用されているかなど、具体的なイメージを掴める内容だ。

総務省消防庁が制作した消防団バイク隊のPR動画

総務省消防庁が制作した消防団バイク隊のPR動画

消防団係長は、「二輪車研修では、PR動画を視聴したり運転実技に取り組むことで、研修の成果を地元に持ち帰ってもらって、赤バイの導入を積極的に検討してもらいたいという啓発の目的もあります。市町村の実態に応じた二輪車活用を考えることが大切です」と話す。

※注2:「安心・安全な社会を目指して 情報収集の要 消防団バイク隊」というタイトルの消防団バイク隊PR動画として、インターネットのYouTubeで視聴できる。
https://goo.gl/cWEh1i

消防庁による初年度の二輪車研修――茨城県立消防学校

では、二輪車研修の内容は実際にどのようなものか――。2019年1月21日、茨城県立消防学校(東茨城郡茨城町)にオフロードバイクが2台納入され、消防庁の手配による二輪車研修が行われるというので訪ねてみた。
講習を委託されたのは、安全運転教育の専門機関である「交通教育センターレインボー 埼玉」で、インストラクター2名が運営・指導を担当し、午前10時から午後5時まで正味6時間の講習が行われた。この日は受講を希望した3人の消防団員のほか、消防学校側から消防職員が4人、合わせて7人が参加した。

茨城県立消防学校二輪車研修会に参加した消防団ら

茨城県立消防学校二輪車研修会に参加した消防団ら

インストラクターは、「普段バイクに乗っている人たちでも、オフロード走行の経験となるとそう多くはありません。オフロードバイク特有の操縦感覚に少しでも慣れてもらおうというのが講習のネライとなっています」と話す。
午前中、受講者はバイク隊のPR動画を視聴した後、オフロードバイクの車両特性と走行に関する注意点について講義を受けた後、屋外に移動し、実車に触れながら車両点検の方法、正しい乗車位置、運転姿勢などを学んだ。

座学ではPR動画を視聴する

座学ではPR動画を視聴する

インストラクターが車両特性を説明

インストラクターが車両特性を説明

オフロードバイクの車両特性を体感

そして午後は、いよいよ運転実技の訓練。オフロードバイクはシート高が高いため、ライダーの体格が小さいと乗降時のバランスが難しい。受講者は、乗り降りの際のコツなども教えてもらいながら、慣熟走行、スラローム、ブレーキング、一本橋、波状路など、運転技能の基本を繰り返し訓練した。

オフロードの走行特性を体感する

オフロードの走行特性を体感する

案外難しい一本橋(低速安定走行)

案外難しい一本橋(低速安定走行)

はじめは恐るおそる乗っていた受講者も、終盤になるとオフロードバイクの操縦を楽しんでいるようにさえ見えた。

段差を越える訓練(波状路走行)

段差を越える訓練(波状路走行)

最後の仕上げは不整地走行

最後の仕上げは不整地走行

同消防学校では、「いまのところ県内の消防団にはバイクの保有はほとんどありません。自然災害が起こると激しい交通渋滞も発生しますので、そういう場面でバイクが使えれば有効でしょうね。県内には44の消防団があって、約2万3,000人の消防団員が在籍しています。赤バイの導入に関心を示す消防団も、今後、出てくるのではないでしょうか」と話している。

消防学校の主催による二輪車研修――千葉県消防学校

消防庁による二輪車研修を経て、消防学校の主催で二輪車研修を実施したケースを覗いてみた。千葉県消防学校(千葉市中央区)には2017年度にオフロードバイクが配備されており、2019年1月26日に、初めて学校主催の二輪車研修が実施された。
同校教務課では、「今回の二輪車研修は、消防学校が行う年間計画に正式に組み込まれています。ただ、現時点では、職員自らが実技指導を行うのは難しいため、今回の講習は外部機関(交通教育センターレインボー 埼玉)に委託して行います」という。
このため、講習の内容は先に紹介した茨城県のケースと同様だ。集まったのは、千葉県下の7つの消防団から合計14人。年齢は20代から60代までと幅広く、女性の参加も3名あった。インストラクターは各々の技量を見極めながら、レベルに合わせた指導を行っていた。

千葉県消防学校の二輪車研修に参加した消防団員ら

千葉県消防学校の二輪車研修に参加した消防団員ら

いすみ市消防団から参加した男性(58歳)は、「ウチの消防団には赤バイがあって、私はかれこれ15年くらい乗ってます。火災があると、いちばん早く現場に到着して無線で後続への指揮をとったり、自然災害対応もあるし、徘徊老人の捜索にも出かけるし、赤バイがあればいろいろと役に立ちます。だからこういう研修が始まったのは喜ばしいですね。ゆくゆくは緊急走行の訓練もぜひ実施してもらいたい」と、取り組みを高く評価した。

いすみ市消防団の受講者

いすみ市消防団の受講者

若者や女性団員にも好評だった

山武市消防団の男性(26歳)は、昨年4月に入団したばかりの新人で、二輪免許は取得して2年と、こちらもまだ経験は浅い。「オフロードは初めてです。でも地面が土だから安心感があって、思い切って操縦しました。転倒もしましたが、むしろそういう体験を安全な場所でできたのがよかった。ウチの消防団にも赤バイがあるので、これを機会に積極的に触れてみたいと思います」と意欲的だった。

山武市消防団の受講者

山武市消防団の受講者

四街道市消防団からは母娘が2人で参加した。お母さんは団員歴が14年目というベテランだが、バイク歴のほうはまだ2年。「娘と一緒に免許を取得して、普段はツーリングを楽しんでいます。オフロードバイクもなんとか操縦できたので、もっと上手になれば防災広報などに使えるかもしれませんね」と話した。
娘さんは、「とにかくバイクはカッコいいです! 赤バイが街を走ったら、みんなもっと消防団に興味をもってくれるかも。バイクが好きだからという理由で消防団に入ってもらってもいいと思います」と、元気に答えてくれた。

四街道市消防団の受講者

四街道市消防団の受講者

「大規模災害団員」制度の推進

わが国の消防団の規模は、団員数が年々減少傾向にあり、将来的にいかに団員を確保していくかが大きな課題になっている。
消防庁長官は、2018年1月19日に各都道府県知事および政令指定都市市長に対して『消防団員の確保等に向けた重点取組事項について』との通達を発し、そのなかで大規模災害時にマンパワーを確保する方策の一つとして、「大規模災害団員」の導入を提唱している。
この大規模災害団員とは、震災など大規模な災害の発生時に、通常の団員だけでは人手不足が生じるような場合に限り出動する人員とされている。具体的には、消防関係OBはじめ、自主防災組織等の構成員、学生、事業所・団体等の従業員、特殊な資機材等を持つ事業所・団体等の関係者などが見込まれている。
活動内容としては、たとえば災害情報の収集・報告と地域住民への伝達、避難誘導、安否確認などを想定。事業所などで所有する二輪車、ドローンなどを活用した情報収集、重機による道路啓開、水上バイクを活用した水難救助などが期待されている。
大規模災害に備えて二輪車を活用できる態勢を整えておくことは、地域社会の安全安心にとって大きなアドバンテージになるに違いない。

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JAMA「Motorcycle Information」2019年3月号特集より
本内容をPDFでもご確認いただけます。
PDF:消防団へ“赤バイ”導入を促す!