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2019.5.8

大規模災害に備えて行政と連携 二輪車業界“バイク隊”3事例

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●二輪車業界にはボランティアで活動する災害救援バイク隊がある。

●自治体や消防、自衛隊と協定を結ぶなど、活動基盤を固めている。

●最近ホットな動きのあった3つのケースを紹介する。

二輪車業界には、二輪車販売店やモーターサイクルスポーツの有志が集まってバイク隊を結成し、地震などの大規模災害に備えようと取り組んでいるケースがいくつかある。基本的には民間の自発的なボランティア組織として発足しているが、自治体や消防など行政機関と連携することで、災害への対応力を高めている。ホットな動きのある3つのケースを紹介する。

消防団の一員として活動――鈴鹿バイク隊「ライドエイド」

2017年6月、全日本選手権のトライアル、モトクロス、ロードレースに出場している現役のトップライダーらが集まって作ったのが「ライドエイド」というバイク隊。三重県鈴鹿市に拠点を置き、メンバーはライダー19人とスタッフを合わせて25人。バイクに関する豊富な知識と、競技で培った強い精神、そしてライディングテクニックを活かして、鈴鹿のまちを守ろうという気構えだ。

鈴鹿バイク隊「ライドエイド」(鈴鹿市の出初式に参加)

鈴鹿バイク隊「ライドエイド」(鈴鹿市の出初式に参加)

ライドエイドの結成を呼びかけたのは、モリワキエンジニアリングの専務取締役・森脇南海子さん。森脇さんは、「日本にはバイクに関する優れた人材と高度なスキルが備わっています。それをもっと社会のために活かせたら素晴らしい。災害が起こったとき、バイクとライダーがまちの安全を率先して守る。そうやってバイクという乗り物がもっと人々に受け入れてもらえるようになれば嬉しい」と話す。

発起人の森脇南海子さん

発起人の森脇南海子さん

当初、ボランティアでの活動を模索していたが、すぐに好機が訪れる。2018年1月、総務省消防庁が消防団の「大規模災害団員」制度を推進したことを受け、森脇さんは鈴鹿市消防本部と協議し、同年4月1日、同県では初となる大規模災害団員として、ライドエイドのメンバー(ライダー19人)を登録。
これにより、ライドエイドと地元の消防本部や消防団との連絡が密になり、月1回の定期的な会合が消防署内で開かれるようになった。もちろんライドエイドのメンバーの処遇も特別公務員の扱いとなり、報酬や手当が支給され、公務災害補償の対象となるなど身分が保証されたのだ。また、使用できる資機材に関しても、バイクは各自の所有車だが、活動時のウエア(ビブス)やトランシーバーなど自治体から提供を受けられるものもある。何よりも、災害が発生した際には、消防本部との連携がしっかりとシミュレーションされ、被災情報の収集や緊急物資の輸送など、バイクを使った有益な活動を行える点が、大きなメリットとなっている。

鈴鹿市の大規模災害団員として活動するライドエイド

鈴鹿市の大規模災害団員として活動するライドエイド

このように役割が本格化したことで、ライドエイドのメンバーは消防団員として必要な資格や応急救護の講習を受けるなど、救助者としての技術も研鑚している。「地元の消防団と連携できて、メンバーの防災意識もどんどん高まっていています」と、森脇さん。バイク隊と大規模災害団員制度がうまくマッチングしたケースとして、ライドエイドの活動はかっこうのモデルケースとなりそうだ。

自治体と協定を結んで活動――AJバイク隊

全国オートバイ協同組合連合会(略称:AJ)は、全国約1,600店の二輪車販売店によって構成されており、二輪車市場の発展を目指して積極的に活動を行っている。
東日本大震災では、AJは宮城県知事から要請を受け、北海道、東京、埼玉、新潟、愛知、大阪などから有志の会員が被災地に向かい、バイクを使った救援活動をほぼ1カ月間に渡って実施した。
北海道在住で、現在、AJの会長を務める大村直幸さんは、災害発生から2週間後、トラックにバイクを積んで苫小牧から臨時フェリーで青森に入り、陸路で宮城県石巻市へと南下した。被災地で不足していた野菜類を可能な限り手に入れ、孤立集落などへと届けて回った。まだガレキの残っていた現地で、バイクの機動力は本当に頼りになるものだったという。

AJ会長の大村さん

AJ会長の大村さん

「二輪車販売店を営む私たちは、もちろんバイクに乗れるし、機械の修理もできる、運搬の資格もあれば、キャンプが得意な人も多い。過酷な被災現場でも、自給自足で役に立つ仕事のできる人が揃っているのです。石巻市では何台もパトカーのパンクを修理したし、発電機を修理してほしいとか、いろいろなリクエストに応ましたよ」と、大村さんは振り返る。

東日本大震災の被災地で活動したAJバイク隊のメンバー

東日本大震災の被災地で活動したAJバイク隊のメンバー

また、この時の活動を通じて大村さんが痛感したのは、バイクの機動力は、災害が発生してからなるべく早い段階でこそ効果が発揮されるということ。道路が啓開されればクルマでも動けるからだ。「ただし早い段階というのは、行政との連携なしでは私たち民間のボランティアはなかなか活動が認められません。南海トラフ地震が警戒されているいま、もし大震災が起こった場合、直ちにバイクを活用できる体制にあるということが非常に大事です。今後ますます行政との連携を考えていきたい」と話す。
具体的には、行政との連携を推進している群馬県オートバイ事業協同組合の取り組みがある。同組合では、災害時の活動を円滑に行うため、自治体と協定を結び、防災訓練を行うなど日頃から備えている。2015年9月には、群馬県と協定を締結。その後、みどり市、館林市、前橋市、渋川市、安中市、今年は桐生市と協定を結んでいる。

災害協定に調印した山本龍前橋市長(右)と城田理事長

災害協定に調印した山本龍前橋市長(右)と城田理事長

同組合理事長の城田新二さんは、「群馬県内では、地震や河川の氾濫、火山の噴火に伴う地滑りといった自然災害が想定されています。当組合では、県内29の二輪車販売店が連絡網を組み、災害が起これば各店からバイク隊員が出動し、行政と連携して迅速に活動することを想定しています」と話す。
各二輪車販売店には、安全運転指導員の資格をもった人が最低1人いて、基本的にはその人が災害時の活動要員となる。一定以上の規模の自然災害が発生した場合、県または市の危機管理課から組合の理事に協力要請が入り、理事は連絡網を使って29の全店舗に連絡、出動を指示することになっている。

群馬県の総合防災訓練に参加した群馬県AJバイク隊

群馬県の総合防災訓練に参加した群馬県AJバイク隊

城田さんは、「幸いなことに、現在までバイク隊の出動が要請されるような災害は発生していません。しかし平時であっても、各市が行う防災訓練などに当組合のバイク隊が積極的に参加するなど、常に高い防災意識を持つよう努力しています」と話している。二輪車販売店のネットワークを活用したバイク隊のあり方の一つとして、ほかの地域の参考にもなる取り組みだ。

陸上自衛隊と協力協定を結んだ――災害VBN関東

「災害ボランティアバイクネットワーク関東」(災害VBN関東)は、2005年8月、日本二輪車普及安全協会(日本二普協)の前身である二輪車安全普及協会などの関係者や日本モーターサイクルスポーツ協会(MFJ)の会員によって結成された、比較的、活動の長い組織だ。現在、日本二普協関東ブロックに事務局を置き、東京、茨城、栃木、埼玉、千葉、神奈川、新潟、山梨、長野の1都9県に活動拠点がある。
2019年2月末現在、会員数は661人で、二輪車販売店の経営者および従業員、MFJライセンス保有者らが登録されている。
そしてこのバイク隊による新しい取り組みとしては、今年3月18日、陸上自衛隊東部方面隊と、災害時における協力協定を締結したこと。災害VBN関東・赤坂正人会長と陸上自衛隊東部方面総監部情報部・嶋本学部長が、同日、陸上自衛隊朝霞駐屯地広報センターで協定書への調印を行った。
災害VBN関東は、バイクの機動力を活用して被災地でのさまざまな支援活動を想定しているが、基本はボランティアによる組織だ。今回の災害時協定によって、大規模災害が発生した際、陸上自衛隊東部方面隊から要請があった場合、災害VBN関東のメンバーが出動し、災害現場の状況を写真撮影してデータ伝送するなど、速やかな状況把握を図る活動を想定しているという。自衛隊と二輪車業界団体との協定締結は初めてのことで、災害時の具体的な連携などについては今後精査し、共同訓練の実施などを検討していく。

協力協定に調印した嶋本部長(右)と赤坂会長

協力協定に調印した嶋本部長(右)と赤坂会長

 

JAMA「Motorcycle Information」2019年3月号特集および、
JAMA「Motorcycle Information」2019年4月号特集より編集
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