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2017.10.18

47都道府県・代表ライダーの声 バイクに乗る女性を増やすには?

●今年も8月に「二輪車安全運転全国大会」が開催された。

●47人の女性クラスの選手全員に、アンケートを試みた。

●女性ライダーを増やすにはどうすればいいか、ヒントを探った。

安全運転全国大会・女性クラスの選手像は?

今年の「二輪車安全運転全国大会」に出場した女性クラス選手の年齢は、20代から50代と幅広い。最年少は20歳、最年長は53歳だった。彼女たちが二輪免許を取得した年齢は、24歳までの若い時期に集中していることがわかった(35人・77.8%)。25歳を過ぎると免許取得の機会が急速に遠のくようだ。
神奈川県の代表選手は、「ずっとバイクに憧れていたけれど、若いときは出産と子育てで乗れなかった」と話す。同選手は43歳で二輪免許を取得、今大会は5位に入賞した。

■女性クラス年齢構成

■女性クラスの年齢構成

■女性クラス選手の免許取得年齢構成

■女性クラス選手の免許取得年齢構成

選手の身長を調べてみた。143cmから178cmまでと体格差は大きい。平均身長は158.1cmで、155~164cmの範囲に32人(68%)が含まれている。女性ライダーはバイクに跨ったときの「足着き」を気にするが、47人の回答を分析すると、身長160cm以上になると「足着きにはとくに困らない」というライダーが多くなることがわかった。
「足着きには常に不安がある」と話す埼玉県の代表選手(41歳)は、「私は小柄なので小型限定の免許を取得しましたが、教習を修了するたびにステップアップを勧められ、けっきょく大型二輪免許まで取りました」と話す。普段は100ccのスクーターを楽しんでいる。今大会、女性クラス準優勝のライダーだ。

■女性クラス選手の身長構成

■女性クラス選手の身長構成

普段はどんなバイクライフ?

女性クラスの選手の所持免許を調べた結果が次のグラフ。競技は原付で行うが、選手自身は大型二輪免許の保有率が高く、28人(59.6%)いた。一方で、二輪免許を取得していない選手も2人(4.2%)いた。

■女性クラス選手の保有免許構成

■女性クラス選手の保有免許構成

沖縄県の代表選手は、普段は1,300ccのスポーツバイクに乗る。「原付スクーターも奥が深いですよ。原付で学んだことが大型バイクのライディングに役立ってます」と話す。熊本県の代表選手は二輪免許を持っていない。「高校が原付通学だったので原付免許はあります。二輪免許を取得したいけど、仕事に追われて時間が取れないのが悩みです」と話していた。
さらに選手たちが普段乗っているバイクを調べると、原付から1,600ccの超大型まで、種類はじつにさまざま。なかでは250ccクラスが14人(29.8%)でいちばんボリュームがあり、ここが中心クラスといえそうだ。

■女性クラス選手の愛車の構成

■女性クラス選手の愛車の構成

使用用途は、やはり「ツーリング」がトップで、24人が筆頭に挙げている。次点は「ライディング講習会」で8人おり、彼女たちにとっては、運転のスキルアップ自体がバイクの楽しみとして成り立っているようだ。

■二輪車の利用用途

■二輪車の利用用途

なぜバイクに乗ろうと思ったか?

そうした彼女たちがバイクに乗るようになるまで、“バイク”にどのようなイメージを抱いていただろうか。回答を見ると「カッコいい」が10人、「趣味の乗り物」が9人と、好印象を持っていた人が多い。続いて、「カッコいいが近づき難い」が8人、「自分には縁がない」が5人、「危ない乗り物」が5人などとなっている。バイクに対して好印象を持つ一方で、事故などへの不安で距離を置く様子も見える。

■二輪車に抱いていたイメージ

■二輪車に抱いていたイメージ

では、バイクに乗るリスクを知りつつ、なぜ彼女たちはバイクに乗ろうと決めたのか、その理由を尋ねた結果が下のグラフ。実用目的を押さえて、「乗れたらカッコいいから」が13人でいちばん多かった。バイクに乗っている自分はカッコいいという自己実現への欲求が、強い動機になっていることがわかる。

■二輪車に乗ろうと決めた理由

■二輪車に乗ろうと決めた理由

北海道の代表選手は自動車教習所の職員。「バイクは事故が怖いし、危ない乗り物だと考えていました。ところが教習所に勤めて毎日バイクを眺めているうちに、だんだん“楽しそうな乗り物”へと見方が変わったんです」と、イメージの変化が免許取得の決め手になったと話す。
宮城県の代表選手の場合、「バイクはカッコいいが、近づき難い乗り物」だった。東日本大震災を経験して人生が燃え尽きたような気持ちになり、「自分を変えたい」と二輪免許を取得。いまは、1100ccの大型バイクを颯爽と乗りこなす自分がいる。これも自己実現の一つのケースだろう。

バイクに乗るまでのハードルは何か?

ただ、女性がいざ二輪免許を取得しようと決意しても、立ちふさがる障壁は少なくないようだ。バイクに乗るまでに何らかのハードルを感じたという人の回答を見ると、「周りからの反対」11人、「事故が怖い」8人、「出産・子育て」4人、「運転に自信がない」3人、「足が着かない」3人など、女性特有の事情も垣間見える。

■二輪車に乗るまでの障壁

■二輪車に乗るまでの障壁

群馬県の代表選手は、「周りからの反対」の一つに高校のバイク禁止を挙げた。「学校から禁止されると、とくに普通の女の子にとっては、バイクは興味をもってはいけないものとして刷り込まれます」と話す。高校のバイク禁止は、その後の人生でも女性をバイクから遠ざけているという指摘だ。同選手は、「群馬県は“三ない運動”をやめたので、やっと若い子にバイクの乗り方を教えられる」と、嬉しそうにしていた。

バイクに乗る女性を増やすには?

日本ではバイクに乗る女性が少ない。「出産・子育て」など男性とは異なった生活があるだけでなく、「周りからの反対」など社会的なプレッシャーが、本来あるべきエントリーを狭めている可能性がある。では、どうすればもっと日本に女性ライダーが増えるだろうか。そのためには何が必要か、選手たちに尋ねてみた。
最も多かった回答は、「女性がバイクに触れる機会を増やす」(15人)というもの。教習所でバイクを見ているうちに乗りたくなったという意見があったように、実際にバイクに触れる機会があると、それが大きな動機づけになる。
島根県の代表選手は、「もっと気軽にバイクに跨れる機会があれば、乗ってみたいと考える女性は大勢いると思います。ただその際、女性はお金にシビアなので、バイクにどれだけ費用がかかるか情報がほしい」と話す。
次に多かった回答が、「バイクへの安心感を高める」(12人)というもの。これは事故への心配や、運転に自信がない不安をいかに払拭できるかということだろう。

■女性ライダーを増やすには?

■女性ライダーを増やすには?

山形県の代表選手は、「安全運転をもっと気軽に学べる環境があるといいですね。講習会がもっと身近に開催されていれば、周りの人たちからも安心してもらえるようになるのでは」という。
「女性向けのバイクを開発する」(9人)という意見も多かった。大分県の代表選手は、「女性は足着きを気にするので、ちょっと小型でかわいくてカッコいいデザインのバイクがあると女の子たちの目を引くかもしれません」と話していた。
バイクに対する女性の需要拡大は、これからの大きなテーマだ。

JAMA「Motorcycle Information」2017年9月号特集より
本内容をPDFでもご確認いただけます。
PDF: 安全大会女性ライダーアンケート