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2021.1.7

二輪4販社トップに聞く 2021年国内市場への展望

〈登場者〉写真左から
●寺西  猛(てらにし・たけし) (株)カワサキモータースジャパン 代表取締役社長
●濱本 英信(はまもと・ひでのぶ) (株)スズキ二輪 代表取締役社長
●室岡 克博(むろおか・かつひろ) (株)ホンダモーターサイクルジャパン 代表取締役社長
●石井 謙司(いしい・けんじ) ヤマハ発動機販売(株) 代表取締役社長

●2020年1-11月の国内自動二輪車販売実績は前年同期を上回った。
●ニューノーマルの時代にあって二輪車の有用性が見直されている。
●カワサキ、スズキ、ホンダ、ヤマハ、各販売会社の社長にインタビューした。

2021年がスタートした。カワサキ、スズキ、ホンダ、ヤマハの二輪車販売各社は、これから春の需要期に向けて販促活動がいっそう活発になる。年の始めに当たり、二輪4販社それぞれの社長を訪ね、2021年の国内二輪車マーケットにどのような経営戦略で臨むか、あるいは市場活性化にどう取り組むか、展望をズバリ聞いた。

ニューノーマルへ強さを発揮する二輪車

昨年は、世界中が新型コロナウイルスの脅威にさらされ、国内の二輪車市場にも大きな衝撃を与えた。大阪、名古屋、東京で予定されていた春のモーターサイクルショーが開催中止となり、ニューモデル試乗会など各社のイベントも自粛を余儀なくされた。ところが、2020年(1~11月)の二輪車販売実績をみると、原付一種は減少しているが、自動二輪車(50㏄超)は前年同期を上回って好調を維持している。“密”を避けて移動できるバイクの有用性が、ニューノーマルへの対応力を示しているともいえそうだ。
各社長へのインタビューは、昨年の二輪車販売を振り返るところから始まった。

●原付一種販売推移(各年1~11月)

●自動二輪車販売推移(各年1~11月)

※原付一種、原付二種は出荷台数(日本自動車工業会調べ)
※軽二輪は届出台数、小型二輪は新規検査台数(全国軽自動車協会連合会調べ)

(株)カワサキモータースジャパン 代表取締役社長 寺 西 猛 氏

1957年兵庫県生まれ。2001年に川崎重工業(株)入社。カワサキモータースフランス参与、同アメリカ社長を歴任、2014年5月にカワサキモータースジャパン社長に就任、現在に至る。

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コロナ禍に負けなかった2020年

【本誌】 2020年のカワサキ車の販売を振り返っていかがでしたか?
【寺西】 コロナ禍のなかでしたが、結果的には前年比でプラスです。緊急事態宣言の4~5月は客足が減って出荷も止まり、販売は前年割れでした。ところが6月からドッと需要が増えて、「店頭に在庫がなくなってきたから早くほしい」という声が挙がったほどで、10月は小型二輪が前年同月比で120%、軽二輪は300%以上に伸び、一時の減少を完全にリカバリーできました。

10~20代が購買力を発揮した軽二輪スポーツ

【本誌】 それは一安心でしたね。いまどんな商品に人気があるのですか?
【寺西】 昨年9月に発売した「Ninja ZX-25R」が絶好調です。カワサキでは21年ぶりの250㏄・4気筒スポーツモデルで、2019年の東京モーターショーで発表して大きな話題を呼びました。これは本当にお勧めできるバイクです。価格が82万5,000円(消費税込)と安くはないのですが、意外にも10代後半~20代のお客様からの購入比率が高いことに驚いています。商品に魅力があれば若い世代も購買力を発揮するのだと、改めて思いました。

カワサキ Ninja ZX-25R

カワサキ Ninja ZX-25R

【本誌】 大型バイクのカテゴリーも好調に売れていると聞いています。
【寺西】 なかでも「Z900RS/CAFE」がかなりの人気を得ていて、年間約4,000台以上売れています。50代前後のリターンライダーに大ブレイクしているわけですが、その人たちの子供世代もこのモデルに関心を持っていて、確実に世代シフトが生まれていくと思います。その流れをさらに加速していくことが今後の課題だと思っています。

商品をスムースに提供できる販売店網を構築

【本誌】 カワサキモータースジャパンは、今年どんな取り組みに注力しますか?
【寺西】 大きな取り組みとしては、引き続き販売店網の再構築を図っていきます。2017~2019年までの3年間で、400㏄を超える新車を販売する「カワサキプラザ」のネットワーク化を進め、現在、全国で80店になりほぼ完成しました。これを100店まで増やします。さらに昨年12月からは、400㏄以下の新車を販売する“新ベース店”のネットワークの再構築を進めています。
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【本誌】 その取り組みにはどんなネライがあるのですか?
【寺西】 カワサキの看板のある店は全国に約700店ありますが、たとえば全店に新車を2色ずつ置いたら1,400台です。国内で1機種当たり1,400台売れたら大ヒットですが、エンドユーザーに売れなかったらたいへんです。つまり、たくさんの店にまんべんなく新車を供給することはできないため、新車を扱うお店を専門化する必要があるのです。もちろん新車を扱わない店では、引き続き中古車を扱ったり、メンテナンスやサービス業務を通じて収益を出していただく、そういう考えです。
【本誌】 ユーザーにとって、新車を売る店舗が限られるのは不便にはなりませんか?
【寺西】 カワサキプラザの構築を通じてわかったのですが、バイクを購入できる店が限られても、全体の販売台数は増えたのです。家から遠くてもプラザ店に行けば、何カ月も待たされることなく新車が購入できる、あるいはすぐに納車時期の見通しが立つので、お客様に満足してもらえます。見た目にも洗練された店内で、音楽が流れていて、コーヒーがサービスされ、ファッショナブルな用品類も飾られて、ご家族でいらしてもリラックスした気分になれる。試乗車も用意してあって目当てのバイクをしっかり比較検討してもらえる、そんな店づくりを進めていきます。
【本誌】 カワサキのお店に行くこと自体が週末の楽しみになりそうですね。
【寺西】 今年も魅力的なニューモデルが次々ラインアップされていますので、カワサキプラザをはじめとした販売店の店頭を通じて、その魅力を大いに体感していただけるよう力を入れてまいります。

(株)スズキ二輪 代表取締役社長 濱 本 英 信 氏

1958年静岡県生まれ。1981年に鈴木自動車工業(株)入社。以来一貫して国内二輪営業を担当し、1999年に(株)スズキ二輪西日本 近畿ブロック長、2012年(株)スズキ二輪社長に就任、現在に至る。

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夢に出てきたWebモーターサイクルショー

【本誌】 2020年を振り返っていかがでしたか?
【濱本】 大阪の営業マン時代に大阪モーターサイクルショーの運営委員を務めていたので、モーターサイクルショーには強い思い入れがあります。それなのに、お客様にスズキの二輪製品を見てもらう大事なモーターサイクルショーが開催できなかったのは断腸の思いでした。悔しくて悔しくて、夢にまで出てきたんです。モーターサイクルショーがネットで開催されている夢なんですね。目が覚めて「これだ!」と思って、担当の社員を集めて“Webモーターサイクルショー”をやろうと、檄を飛ばしました。日にちもないのに担当者たちは相当苦労したようですが、東京のショーが開催されるはずだった日程に合せて、なんとか実現することができました。
【本誌】 まるで本当の会場に立っているような、臨場感のあるサイトでしたね。
【濱本】 大きな反響があったので、スズキの試乗会である「ファンRIDEフェスタ」もWebでやろうと、また檄を飛ばして、それも実現して大好評。実際に触れてみることはできないけれど、それぞれのバイクの魅力がとてもよく伝わる出来栄えでした。

軽二輪スポーツに若者が熱い視線

【本誌】 Webでの広報展開をして、販売への手応えはいかがでしたか?
【濱本】 よかったのは軽二輪スポーツで、昨年発売した「ジクサー250」、「ジクサーSF250」がブレイク中です。世界的なコロナ禍の影響で生産が遅延して、なかなか供給できなかったのですが、それが改善されて、9月後半から急速に販売が伸びています。若い人たちに乗ってほしい商品なので、エイベックス所属「lol -エルオーエル」のミュージックビデオやSNSを活用して商品の情報を拡散したところ、作戦通り購入者の7割を30代以下の若者が占めています。当社の同じ軽二輪である「ジクサー150」「GSX250R」との売り分けにも成功しています。スズキ自慢の油冷エンジンで、いわばバイクの“ツウ”に好まれる商品なのですが、若い人たちにはスタイリングと、軽快な走りが大きな魅力になっているようです。

スズキ ジクサーSF250

スズキ ジクサーSF250

【本誌】 一昨年5月に復活した「KATANA」の人気はいかがですか?
【濱本】 初代のKATANAは私の入社年に出たんですよ。だから思い入れも強くて、復活は巡り合わせだからしっかりセールスしなくてはと、2019年には「KATANAミーティング」を実施しました。そうしたところファーストKATANA*注のオーナー含め1,600人ものKATANAファンが集まってくれたのです。なかには、「KATANAを復活してくれてありがとう。これでKATANAの系譜が受け継がれて、本当に嬉しい」というファーストKATANAの方がいました。商品ブランドの力というのは、私たちが思う以上に大きなものなんですね。とても新型に乗り換えてとは言えませんから、「ぜひ新型も1台、増車してください」とお願いしました。
注:ファイナルエディション(2000年)以前のKATANAを、スズキ二輪社内では敬愛を込めて「ファーストKATANA」と呼んでいる。
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ネット・SNSとリアルイベントによる相乗効果を図る

【本誌】 2021年はコロナ禍が続きそうですが、どのような販売促進をお考えですか?
【濱本】 「Webモーターサイクルショー」や「WebファンRIDEフェスタ」をやってみて、ネットやSNSによる情報拡散がどれだけ大事か実感しました。今年もWebとSNSを通じてスズキのバイクに関心を持ってもらい、ネットからいかに現実の販売店へと足を運んでもらえるか、その仕掛けに取り組んでいきます。2019年に大阪と東京のモーターサイクルショーには合計22万人以上が来場しました。昨年、Webモーターサイクルショーの閲覧は12万回以上ありました。すると、両方を合わせれば30万人以上に情報が行き渡ることになります。試乗会も同じように考えて、今後はネットとリアルイベントのハイブリッド化を図り、これまで以上の販売拡大につなげていこうと決意しています。

(株)ホンダモーターサイクルジャパン 代表取締役社長 室 岡 克 博 氏

1964年東京都生まれ。1987年に本田技研工業(株)入社。1996年Honda R&D Southeast Asia、2003年Honda R&D India、2016年Honda Manufacturing (Nigeria)歴任、2020年6月より現職。

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日本にバイク人気「来ている」感じがある

【本誌】 室岡社長は新興国への赴任歴が豊富ですが、日本に戻ってみていかがですか?
【室岡】 ナイジェリアの町には子供の姿がたくさんあって、大勢の人で賑わい、多くのバイクタクシーが行きかっている。そんな熱気とカオスの国から帰ってきて、日本は正反対だなと。社会が成熟しきって、さまざまな規制もあり、減少し続ける二輪車市場には再開拓が必要だと、気を引き締めました。
【本誌】 確かに、国内の二輪車市場は放っておいても成長する市場ではありません。
【室岡】 そうです。ただ、いま言ったように課題はあるけれど、一方で“バイク人気が来ている”という肌感覚があります。コロナ禍で、昨年の春はかなり落ち込み、需要の予測が非常に困難な状況でしたが、夏以降は販売増に転じ、バイクの有用性や機動力が改めて認識されているという感じがあります。

若者がバイクに乗り始めている

【室岡】 当社の商品でいうと、軽二輪クルーザー「レブル250」の販売が好調で、たいへん好評をいただいています。調べてみると、お客様の65%が30代以下で、さらにその80%は、免許取得後に初めてバイクを購入した人たちでした。これまで累計約2万台販売していますから、このモデルは約1万人の新しい若いライダーを生んでいるのです。日本でも若年層の開拓がしっかりできることの裏付けとなっているのです。

ホンダ レブル250

ホンダ レブル250

【本誌】 レブル250のどんな魅力が若者に支持されているのでしょうか?
【室岡】 堂々とした車格ながらも、軽量かつ優れた足つき性などの魅力が高く評価されています。ただ、ロングツーリングしたいとか、走りを楽しみたいとか、そういう志向性ではないと思います。インスタグラムで「#レブル女子」で検索してみてください。たくさん画像が出てきますが、跨った自分が“映える”バイクであることが大切な要素なのです。それが一過性の流行で、若者がバイクから離れてしまわないようにするにはどうするか、そこが次のテーマなのだと思います。
【本誌】 ここ10年、日本では原付二種の存在感が高まっています。
【室岡】 レブルとは違って、40代以上の壮年男性に支持されているのが125ccクラスの「CT125・ハンターカブ」です。このバイクで行くソロキャンプが、いま熱いらしい。「1人でツーリング」×「1人でキャンプ」、それが“男のロマンの掛け合わせ”なのだと思います。1人きりで寂しい感じもしますが、あえてそこを楽しむ。“密”を避けるいまの時代にも合っているのかもしれません。
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「HondaGO BIKE RENTAL」で市場のすそ野を拡大

【本誌】 昨年スタートした「HondaGO BIKE RENTAL」の反響はどうですか?
【室岡】 おかげさまで、4月からの半年間で約2万人の方々に登録いただいて、多くのお客様にご利用いただきました。当社としてバイクのレンタル事業は初めてですので、もっとご利用いただけるようにサービスを向上させていきます。とくに免許を取得したばかりで、これからバイク選びをしようという人に乗ってもらいたいので、立ちゴケにも対応する保険を用意したり、料金半額のクーポンを発行するなど、若い人や初めての人に安心してバイクを試してもらえるよう継続的に取り組んでいきます。
また、今年も残念ながらモーターサイクルショーが中止となりましたが、ホンダでは昨年の「Honda バーチャルモーターサイクルショー」以上に若者をターゲットにした仕掛けと内容で、まだバイクに乗っていない人たちの関心もどんどん高めていこうと考えています。ライフスタイルに合ったお気に入りのバイクの楽しみ方を見つけて、「HondaGO BIKE RENTAL」を活用したり、購入を検討していただく。今年も幅広いラインアップとさまざまなサービスを提供し、新たな需要の創出に取り組みます。

ヤマハ発動機販売(株) 代表取締役社長 石 井 謙 司 氏

1963年東京都生まれ。1987年にヤマハ発動機(株)入社。国内二輪営業経て、電動アシスト自転車「PAS」企画部門を17年間担当。2017年ヤマハ発動機販売(株)取締役、2018年同社社長に就任、現在に至る。

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コミューティング全体の利便性を高めたい

【本誌】 石井社長は長年PAS事業に携わって、自転車にも造詣が深いそうですね。
【石井】 コミューターの世界は複雑で、自転車、電動アシスト自転車、原付一種、原付二種まで、それぞれに役割と代替性があります。そして電動アシスト自転車を含めると、国内のコミューティング需要は拡大しています。そういう環境変化も含めた全体を見渡して、原付一種や原付二種がそれぞれ適材適所に売れる市場を開拓していくことが大切だと感じています。
【本誌】 原付一種や原付二種が普及していく領域はどこにありますか?
【石井】 地方都市では移動距離や経済性の点で原付一種が生活の足として支持されており、大都市では原付二種にニーズが移ってます。こういった需要分析を行いながら、コミューティング全体の利便性を上げていきたいと考えています。

商品ブランディングを鮮明にする

【石井】 また、軽二輪以上のカテゴリーについては趣味性がプラスされますので、商品のブランディングがとくに重要です。最近のモデルで典型的なのは、昨年7月に発売した「テネレ700」です。ヤマハのアドベンチャーモデルは、第1回パリ・ダカールラリーで優勝した「XT500」から歴史が始まり、1990年代にパリ・ダカを席巻した「スーパーテネレ750」に受け継がれ、その商品ブランドは国内外で信頼を得ています。新型「テネレ700」は、オフロード走行へのこだわりが徹底していて、走破性に関してまったく妥協せずに開発したバイクです。たとえ普段はオンロード走行が多いとしても、悪路走破性はいっさい手を抜かない。これが「テネレ ブランド」であり、荒野へのロマンを駆り立てる、本当に付加価値の高い商品としてお勧めしています。

ヤマハ テネレ 700

ヤマハ テネレ 700

【本誌】 ユニークなところでは、前2輪モデルもラインアップが充実してきましたね。
【石井】 昨年発売した「トリシティ300」には初めてスタンディングアシスト機能が搭載されて、信号待ちで停車したときなど、スイッチ一つで自立支援してくれるんです。走行時にしても、前2輪の安定感は抜群で、悪路や路面環境の変化に強いという特性を持っています。LMW(ヤマハの前2輪システム)の素晴らしさをもっと広く社会に認知してもらえるように、「安心・安全のLMWテクノロジー」の強化をはかり、ヤマハブランドのバリューアップにつなげたいと思います。

普及拡大と安全運転啓発をセットで取り組む

【本誌】 ニューノーマル、新生活様式が推奨されていますがどう対処しますか?
【石井】 二輪車が感染症リスク低減のパーソナルな移動具として注目されている点はポジティブに捉えている一方で、交通事故が増えている事実もあります。私たちは「ヤマハ ライディングアカデミー」という安全運転スクールを実施しており、2020年には40回の計画に対し、コロナ禍の影響で15回の開催となりました。主に初心者や運転を不安に思う方のために用意した、午前中のトレーニングと、午後のミニツーリングをセットにしたカリキュラムが好評です。生涯にわたってバイクを楽しんでいただけるよう、これまで以上に、楽しさに加え「安心・安全」をセットで普及していきます。
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新YSPネットワーク本格展開

【本誌】 2021年以降の市場戦略における販売店網での取り組みはありますか?
【石井】 一昨年、新YSP政策を発表し、本年から本格的にリニューアルと新規出店が始まります。新YSPは、40年の歴史が培ったYSPの財産を活かし、今回の政策で、より対応品質の高いネットワークへとリニューアルします。魅力的なYSPネットワークの構築で、ヤマハファンの高い期待に応えていきたいと思います。

JAMA「Motorcycle Information」2021年1-2月号/新春インタビューより
本内容をPDFでもご確認いただけます。
PDF:二輪4販社トップに聞く2021年国内市場への展望