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2020.2.4

金メダル級の活躍が期待される! 世界選手権Moto3に挑む日本人ライダー

●2020年「ロードレース世界選手権・Moto3」に日本人ライダー6人が参戦。

●どの選手もグランプリで優勝できるレベルにあり、活躍が期待できる。

●若手ライダーを育成するプログラムが確実に実を結んでいる。

2020年、話題を呼ぶスポーツコンテンツは、オリンピックだけではない。今年はモーターサイクルスポーツにも、とくに注目すべきレースカテゴリーがある。若きライダーの登竜門、「ロードレース世界選手権・Moto3」(Moto3)だ。2020年シーズンのMoto3には、日本人ライダー6人が出場することになり、“金メダル級”の活躍が期待される。

2020年はMoto3が熱い(2019年日本GP)

2020年はMoto3が熱い(2019年日本GP)

Moto3で活躍し始めた日本の若手ライダー

ロードレース世界選手権のMoto3は、最高峰のMotoGP、Moto2に次ぐカテゴリーで、2012年から開催されている。レースは、250cc・単気筒・4ストロークのレース専用マシンで競われ、2020年は世界各国で全20戦が行われる。出場するライダーには年齢制限があり、初回出場は16~25歳まで、継続出場は28歳までとなっており、若手ライダーがここを踏み台にして、Moto2、MotoGPへとステップアップを図る流れになっている。
近年のMoto3への日本人ライダーの出場(スポット出場を除く)状況をみると、2016年に2人、17年に3人、18年に4人、19年に5人、そして20年は6人と、年々増えてきた。とくに2019年シーズンは、第1戦のカタールGPでいきなり鳥羽海渡選手が優勝し、日本人によるMoto3初優勝が大きな話題になった。
しかも、昨シーズンは鳥羽選手だけでなく、第13戦のサンマリノGPでは、鈴木竜生選手がポールポジションから初優勝。続いて第14戦のアラゴンGPでは、この年、初めてレギュラー参戦していた小椋藍選手が2位で表彰台に上るなど、早くも高い能力をアピールした。
2020年はこの3人に加え、2017年のMoto3でルーキーオブザイヤーを獲得した佐々木歩夢選手が継続参戦、また、スペインで開催されている「レプソル CEV Moto3ジュニア世界選手権」(CEV世界選手権)で好成績を挙げた山中琉聖選手と國井勇輝選手が新たにレギュラー参戦する。どのライダーもグランプリで優勝できるレベルにあり、シリーズチャンピオンの誕生にも期待がかかるところとなっている*注。

*注:2020年のロードレース世界選手権は、最高峰のMotoGPには中上貴晶選手(2019年ランキング13位)、Moto2には長島哲太選手(同14位)が継続参戦することになっており、この2人の活躍も大いに期待されている。

 

●2020年ロードレース世界選手権・Moto3に出場する日本人ライダー
02_●2020年ロードレース世界選手権・Moto3に出場する日本人ライダーHonda Team Asiaに取材し、同チームのライダー2人に開幕前の意気込みを聞いた。また、監督の青山博一さんには、グランプリで勝つための秘訣について尋ねた。

小椋 藍選手「年間ランキング3位以内を目指す」

Honda Team Asiaから参戦2年目となる小椋選手は、埼玉県出身の18歳。昨年1年間のMoto3出場経験で、大きく成長している。「初年度の目標だった表彰台を獲得できて、自信になりました。ただ、得意なサーキットと苦手なサーキットがあって、それが結果に出てしまいます。細いコーナー、速いコーナー、路面の状態とか、コースの好き嫌いをいかに克服できるか、今年は対策を考えます。目標は年間ランキング3位以内。安定して上位の成績を残せれば、きっと手が届くと思います」と話す。アスリートらしい真摯な印象の青年だ。
ホンダのエースライダーとして、さらに成長した走りが期待されている小椋選手。2020年は、勝負をかける年になる。

小椋 藍選手(ゼッケン 79)

小椋 藍選手(ゼッケン 79)

國井勇輝選手「バイクに乗ったら年上も年下もないですよ」

「レースで優勝するときは、いつもスタートからトップに出て引き離すパターンです。それが自分の会心の走りですね」と話す國井選手。「逆にいうと、バトルになるとなかなか勝てなくて、行くべきところで引いてしまったり、そのへんがまだまだかな」と、課題を素直に認めるところが初々しい。東京都出身の16歳、笑顔に屈託がない。
3歳でポケバイ、9歳で鈴鹿サーキットレーシングスクールに通い、2016年には13歳で「アジア タレント カップ」へ出場。翌17年から欧州に進出し、18年には「CEV世界選手権」でランキング6位となり、頭角を現した。19年はケガに泣かされたが、速さが認められてMoto3への切符を手にした。今シーズンの目標は、「チームメイトの小椋さんが初参戦で表彰台に立っていますから、自分もそれを超える結果を残したいと思います」と、勝利を誓う。ホンダが期待を寄せる大物ルーキーのデビューが楽しみだ。

國井勇輝選手(ゼッケン 92)

國井勇輝選手(ゼッケン 92)

青山博一監督「チームを一丸にするライダーが強い」

Honda Team Asiaを率いるのは、元MotoGPライダーの青山博一さん。監督に就任して今年は3シーズン目の采配となる。
「私の現役時代は、20歳を過ぎて世界選手権へ進むのが普通でしたが、いまや欧州では10代のライダーがどんどん育っていて、みんなMoto3を目指してきます。日本の若いライダーが世界へ進出できる環境も、やっと最近整ってきたところなのです」と話す。
チームの展望については、「小椋は世界選手権1年目でランキング10位でした。シリーズ中盤からパフォーマンスを上げて、後半はシングルフィニッシュしていたので、当然、今年はチャンピオンタイトルに挑戦です。國井もここ2、3年で欧州のレースに馴染んだので、初参戦でも優勝できるチャンスはあるはず。2人で少なくとも4勝は挙げてほしい」と、目標を掲げた。

青山博一さん

青山博一さん

青山さん自身、2009年にMotoGP・250㏄クラスで世界チャンピオンとなり、ライダーとしての栄光も、苦しい時期の辛さも知り尽くしている。これからMoto3の頂点を目指すライダーに必要なこととは何か尋ねてみた。
「若いライダーに足りない部分でいうと、レースウィークの金、土、日の組み立て方、つまりレース本番に向けた練習走行と予選、そこで出てくる問題をどう改善していくか、大きな流れをコントロールする経験値です。ライダーが自分のパフォーマンスを100%発揮するには、ライダー自身が自発的に考えて行動し、チームの団結力をレース本番へと集中させていくことが大事。それが勝つための秘訣なのです」と語った。

Moto3へ出場するライダーたちのプロフィール

●鈴木竜生(すずき・たつき)選手/千葉県出身・22歳
チーム:SIC58 Squadra Corse(マシン:ホンダ) ゼッケン:24

鈴木選手は2015年からMoto3にフル参戦。Moto3への挑戦が5シーズン目となった2019年は、第4戦のスペインGPで自身初の表彰台となる2位を獲得。第13戦のサンマリノGPで、初のポールポジションを獲得し、決勝レースではついにGP初優勝を果たした。年間ランキングは8位。2020年はさらなる躍進が期待される。

06_鈴木竜生選手

●山中琉聖(やまなか・りゅうせい)選手/千葉県出身・18歳
チーム:Estrella Galicia 0,0(マシン:ホンダ) ゼッケン:0.6

山中選手は、2015年に14歳で「アジア タレント カップ」に出場。2017年は、「MotoGPルーキーズカップ」へも進出し、ランキング6位と自己をアピール。2019年は、「CEV世界選手権」に出場し、第2戦では優勝を獲得するなど、好成績を挙げた。2020年は、いよいよMoto3へ初のレギュラー参戦となる。

07_山中琉聖選手

●鳥羽海渡(とば・かいと)選手/福岡県出身・19歳
チーム:Red Bull KTM Ajo(マシン:KTM) ゼッケン:27

鳥羽選手は、2014年「アジア タレント カップ」の初代チャンピオン。16年には、「MotoGPルーキーズカップ」で2勝を挙げランキング5位。「CEV世界選手権」でも優勝を果たしてランキング4位となり、大きく前進した。
2017年からは、Moto3へ挑戦。2019年には、第1戦で見事優勝。2020年はKTMへ移籍し、新規一転、王座を狙う。

08_鳥羽海渡選手

●佐々木歩夢(ささき・あゆむ)選手/神奈川県出身・19歳
チーム:Red Bull KTM Tech 3(マシン:KTM) ゼッケン:71

佐々木選手は2015年「アジア タレント カップ」のチャンピオン。続く16年は、「MotoGPルーキーズカップ」で日本人初のシリーズチャンピオンを獲得。2017年にMoto3へ挑戦し、ルーキーオブザイヤーを獲得。2018年、2019年と、ランキング20位で足踏みしたが、ライダーとしての非凡な能力をアピール。2020年は、大いに巻き返しが期待されている。

09_佐々木渉夢選手

写真:鈴木、山中、鳥羽、佐々木選手の各写真は「ライディングスポーツ」提供
JAMA「Motorcycle Information」2020年1-2月号/特集より
本内容をPDFでもご確認いただけます。
PDF:金メダル級の活躍が期待される!世界選手権Moto3に挑む日本人ライダー