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2016.5.31

群馬県が「三ない運動」を見直し 全県的な安全教育推進の方針へ

●「三ない運動」とは、「バイクの免許を取らない、乗らない、買わない」のことで、高校生のバイク利用を禁止する運動です。

●群馬県では長年にわたって「三ない運動」が実施されてきました。

●しかし、同県の交通安全を推進する条例が可決され、「三ない運動」をやめて、新しい教育方針へと転換を図ることになりました。

 

「三ない運動」の転換を決めた群馬県

群馬県では1982年以来、高校生の二輪車利用について「バイクの免許を取らない、乗らない、買わない」という「三ない運動」を実施してきましたが、2014年12月15日の県議会で、この運動を見直す内容の決議と条例が可決されました。「群馬県の交通安全対策に関する決議」と「群馬県交通安全条例」です。

画像は写真通学のイメージです。

画像は写真通学のイメージです。

条例の前文では、「群馬県では、これまで高校生に対して『三ない運動』を推奨してきました。しかしながら、一方では自転車事故の多さやマナーの悪化が問題となっております。また、四輪車の普通免許取得後一年以内の事故発生率は、全国的にも高い水準で推移しております」と指摘したうえで、幼児から高齢者にいたる各年齢層への交通安全教育の推進を定めました。
決議文では「交通安全教育のためのアクション・プログラム(行動計画)」の作成や、学校における運転免許取得規制の見直しなどについても求めています。このため、同県では「三ない運動」を取りやめ、全県的に交通安全教育に関する取り組みを活発化していくことになります。

クルマ社会を前提にした安全教育が必要

こうした議決が行われた背景には、群馬県が1990年以降、2012年までの23年にわたり、都道府県別の「初心運転者事故者率」で全国ワースト1をほぼ連続で続けている実態があります(次表参照)。

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●初心運転者事故者率の上位10件の推移(警察庁調べ、単位%)

この問題を県議会で最初に取り上げた議員は、「3年ほど前だと思いますが、このデータを見たときに、『確かに群馬県は車社会だけれども、なぜこんなにワースト1が続いているのか』と不思議に思って、議会で質問などしていました。そして、どうも高校で『三ない運動』を継続していることに、その要因の一つがあるのではないかと行き当たりました」と話します。
さらに、「『三ない運動』は、主にバイクの免許についての規則ですが、だんだん拡大解釈のように『在学中は四輪免許もダメ』ということになっています。しかし、生徒は卒業したら就職したり、大学などに入って車を使い始めます。高校で免許取得を規制していたら、卒業したとたんに一斉に乗り始めるわけで、むしろ高校在学中から、そういう卒業後のクルマ社会を前提にした安全教育をすべきではないかと思いました」と話します。
そして県議会でこの問題を取り上げ、高校生年代のみならず県全体としての交通安全施策の必要性を議論するため「交通安全対策特別委員会」を設置し、2014年3月から議論を進めてきました。冒頭の決議と条例は、そうしたプロセスを経て議決されました。

県の決議と条例で交通安全教育を推進

決議文の内容をみると、まず普通免許取得後1年以内の事故者率や高校生の自転車事故が、何年にもわたって全国ワースト1であるという状況に触れたうえで、「こうした状況から一刻も早く脱することができるよう、交通事故減少に向けた一層の取り組み強化を図ることが喫緊の課題となっている」と指摘し、県当局に対して次のような具体的な取り組みを求めています。

1.小・中・高校生に対する自転車運転のマナーアップを含めた交通安全教育のためのアクション・プログラム(行動計画)を、知事部局、教育委員会、警察本部の各関係部局で連携して作成のうえ推進すること。
2.運転免許の取得は、関係する交通法規等を学ぶ機会でもあることから、法律で定められた取得可能な年齢に達した者にあっては、本人及びその保護者の希望により取得できるようにすること。

 

この2項目は、実質的に三ない運動の見直しを求める内容になっています。
また、この決議と同時に可決された「群馬県交通安全条例」では、第2条で「県は交通安全に関する総合的な施策を策定し、実施する責務を有する」と明確化し、施策の内容として、「県は、県民の交通安全意識の高揚を図り、交通事故を防止するため、(学校等並びに家庭、職場及び地域において)幼児から高齢者に至るまでの交通安全教育を推進する」(第6条第1項)と規定しました。
さらに「県は、高等学校、中等教育学校等の生徒が、在学中に自動車等の免許を取得することが可能な年齢に達することから、交通社会の一員としての責任ある行動がとれるよう、総合的かつ計画的な交通安全教育に努めなければならない」(同条第2項)として、行政が行うべき施策の方向性について定めています。

教育委員会や県警が連携しアクションプログラムを推進

同県では、知事部局の交通政策課が中心となり、教育委員会、県警などと連携を取りながら、総合的な交通安全対策として「アクション・プログラム」を作成し、高校生や若者に対して、より効果的に交通事故防止が実現していくことが期待されており、群馬県の取り組みからは今後も目が離せません。

「Motorcycle Information」2015年2月号・ズームアップより

本内容をPDFでもご確認いただけます。

群馬県が「三ない運動」を見直し